川村たかし(1931~)の最初の単行本『川にたつ城』(実業之日本社、1968)も奈良県の山村を舞台にしていたが、本書も奈良県十津川村から始まる。1889年8月、奈良県吉野郡十津川村は大豪雨にみまわれた。土石流が襲いかかるうえに地震まであり、山は轟音と共になだれ落ち川をせき止め、川水は逆流して両岸の民家を飲み込んだ。一度に両親を失った9歳の主人公、津田フキは、兄と共に新天地をもとめて北海道開拓にむかう2600人の集団の一員になる。10月から冬が来る北海道の荒地に、見捨てられた彼らは、生き延びるために自然や大地と格闘し、またその自然や大地から生命力を貰い、新十津川村を切り開く第1世代の住民となる。